角膜穿孔
角膜穿孔とは以前取り上げた角膜潰瘍のひどいものということで、要は角膜の傷が完全に角膜全層を貫通してしまった状態です。
この場合手術は急を要し、処置が早ければきれいに治すことも可能ですし、逆に処置が遅れると最悪眼球全体の炎症、化膿へと進み、眼球摘出(眼球をとる手術)が必要となる可能性もあります。
上段の写真は猫の角膜穿孔で、運悪くガラスのかけらで傷を負ってしまい、その事故から数時間以内に病院に連れてこられました。
中段の写真は角膜縫合術で穴を塞いだところです。この糸は0.07mmの極細の糸で、写真でははっきりと見えますが、肉眼ではよく分からないくらい細い糸で縫ってあります。
この糸は吸収性の糸で、溶けてなくなるので抜歯の必要はありません。
下段の写真はその後完治して糸が溶けたあとの写真で、きちんと視力も維持できています。
ガラスでの事故はとても不運なことでしたが、幸い飼い主さんがすぐに連れてきてくれたという点、そして牙や爪などによる汚染された傷ではなく、ガラスという比較的きれいなものでの傷であった点で、この角膜縫合という術式を選ぶことができました。
これがガラスではなく、喧嘩傷だったり、あるいは飼い主さんが連れてくるのがあと一日遅かったら、おそらく前述の結膜回転フラップ法を選択せざるをえなかったでしょう。
結膜回転フラップ法を選択した場合、完全に元通りの角膜、視力というわけにはいかないので、この病気に限らずですが、いかに早期発見早期治療が重要化ということがわかります。
ちなみに結膜回転フラップ方よりもこちらの手術のほうが短時間で終わりますので、手術費用も大分安くて済みます。